024 【脱線】動物の神と妖(あやかし) |
- 日時: 2012/05/19 02:45
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- 古来、日本では農耕民族であるが故に「水神」「耕作神」を崇め奉る風習がありました。
8世紀頃までは、その神の地位は「ヘビ」が独占していました。 「ヤマタノオロチ」・大和三輪山の「オオモノヌシ」などはヘビがモデルです。 山は水源地であり、ヘビは山の水辺に多く生息し、山神であるヘビは水神へ、そして、水田耕作の神へと変遷していきました。 8世紀も終わりになると、ヘビに代わって神の地位に登りだしたのが「キツネ」です。 田の神の祭場にする為、耕されなかった土地にキツネが巣を作り、人の目に触れる様になりました。 また、キツネの体色が稲穂の色に類似している事から「類感呪術(imitative magic)」により、キツネを祀り繁殖を促す事によって、稲の豊作を願ったのではないかと言われています。
11世紀(平安時代半ば過ぎ)には、伊勢神宮では「キツネ信仰」は非公認でしたが、伊勢ゆかりの下級宗教者達が京の街で「キツネ信仰」を流布し始めました。 12世紀後期では、「キツネ信仰」は伊勢神宮公認となっていました。 キツネは大手神の中でまず「伊勢神宮」と結びついたのです。 伊勢外宮の豊受神は食物神であり、食物神とは農耕神と変わらないものです。 14世紀になるとヘビ神である「竜頭太(りゅうとうた)」が稲荷山の神をやめ、代わりにキツネが移り住み、キツネは「稲荷」の眷属、又は、稲荷そのものとなりました。 但し、江戸時代に入り、キツネ(稲荷)は農耕神から、手工業・サービス(商)業などの神となり、現代に至ります。
ヘビがキツネにその地位を奪われたのは、竜の姿に似た事から「神」と扱われたが、ヘビには死霊のイメージがあり、そのマイナスイメージが足を引く事になったのではないかと考えられています。
タヌキが人を化かす様になったのは、近世紀(江戸時代)に入ってからです。 キツネが人を化かす話が次第にタヌキへと変わっていきました。 これは、キツネよりも警戒心が薄いタヌキの方が人と近い存在であり、また、タヌキの滑稽さが受け入れられた為と言われています。 四国・佐渡・(四国に近い)大阪などでキツネに代わりタヌキが農耕神へとなりました。 また、タヌキは木の洞に巣を作り、木登りも得意であり、「樹霊信仰」からヘビから直接タヌキに代わった場合もあります。 タヌキは、ヘビとキツネ双方の代役を勤めているのです。
「狸」と言う漢字は、中国ではヤマネコ・ジャコウネコ(名前はネコだけどネコじゃないです)を表す文字のため、本来は「ネコ」である中国から入ってきた話が日本では「タヌキ」と混同されてしまいました。 また、タヌキは「ムジナ(狢)」とも呼ばれていました。 しかし、「アナグマ」の事もかつては「ムジナ」と呼んでいたのです。 結局、日本では「タヌキ」と「アナグマ」と「ムジナ(狢)」と「狸」と「ネコ」が混同してしまいました。 「同じ穴の狢(むじな)」と言う言葉がありますが、これは「同じ穴のタヌキ」って事です。 ※中国では、犬よりも小さな猫くらいの大きさの四足動物を「狸」と表記していました。 ※日本では、タヌキやアナグマを「狢(ムジナ)」と呼んでいました。
他にも日本では、シカ・イノシシ・カモシカ・オオカミ・クマなどが「山神」として扱われていました。 しかし、シカ・イノシシは、食用とされていたため、人に変身しません。(人肉食につながるから) また、オオカミ・クマ・カモシカは、人里に現れる事が少ないため変身しません。(物語が作られにくいから) ウシ・ウマは、人に仕える動物である事から、人より格下として扱われた事から人に変身しません。 人として(軽微な)罪を犯した者は、ウシやウマに生まれ変わるとされていました。 ネコとネズミは、人に変身する事もありますが、どちらかと言えば「憑(つ)く」方が得意な様です。 イヌは、鬼や疫病神を追い払うとされ、厄除けにはイヌが有効とされました。 お腹に赤ちゃんが宿ると「戌(いぬ)の日」に厄除けの戌帯を締めるのはこの為です。 また、人に化けたタヌキを見破るのはイヌの仕事でした。
古来の日本人は、動物に神の姿を見て、同時に災いの原因とも見なしたんですね。 勿論、森や風やお日様にも神の姿を見ていた日本人の心の中には「八百万(やおよろず)の神」が宿っていたのです。
【訂正】 (訂正前) 「類観呪術」 (訂正後) 「類感呪術(imitative magic)」 ※ 漢字表記を訂正しました。
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