012 【脱線】オオカミ(狼)について |
- 日時: 2009/10/05 13:36
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- 世界中で多くの動物が絶滅しました。
そして、今も多くの動物が絶滅しようとしています。 日本でも多くの動物が絶滅しました。 最近で有名なのは「トキ」ですね。 現在は中国産のトキを繁殖放鳥しています。 そして、今もツシマヤマネコやイリオモテヤマネコなどの動物が絶滅しようとしています。 かつて日本には、本州以南にニホンオオカミ(日本狼)と北海道にエゾオオカミ(蝦夷狼)の2種類の狼が生息していました。 両種とも明治時代に乱獲駆除され、絶滅してしまいました。
何故、彼らは「明治」と言う時代に入ってから、絶滅したのでしょうか?
答えは単純明快で「明治維新」以後の日本には多くの「西洋文化」が流れ込んで来たためです。 「赤頭巾ちゃん」「狼と七匹の子山羊」「羊飼いと狼」「三匹の子豚」などの童話を見ても西洋文化において「狼は悪いヤツ」なのです。 では、江戸までの日本文化では狼は悪いやつなのでしょうか? いえいえ、日本では「狼は良いヤツ」なのです。 農耕民族である日本では、農作物を荒らすのは「シカ・カモシカ・サル」などの動物でそれらを退治してくれるのが「オオカミ」なのです。 ですから、日本では「狼を神として奉る」風習すらあるのです。
狼はどんな生活をしていたのか?
狼は「雄雌のつがいを基本とした家族」で群れを成して生活する動物です。 そしてその群れは自分達の「テリトリー」を持っています。 群れはテリトリーの中で狩猟をし、テリトリーから出る事はほとんどありません。 このテリトリーを維持するために「狼の遠吠え」があるのです。 狼は自分の群れ以外の狼の存在を許しません。 自分のテリトリーに入り込んだ狼を徹底的に排除します。 その為、他の群れとのテリトリーの間には「緩衝地域」が存在し、他の群れと争わない様になっています。 狼は成獣となると群れを離れます。 群れを離れた狼は「緩衝地域」へと入り込み、単独で生活します。 この時に他の群れのテリトリーに入り込んだ狼は群れに襲われ、ほとんどの場合、死ぬ事になります。 運良く異性と出会いつがいとなって「新たな群れ」を作れるものは半数以下です。 狼は群れで狩りをする生き物なので自分よりも体の大きなシカやカモシカを単独で狩猟する事が難しく、80%の雄と50%の雌が生存競争から脱落する事になります。
何故生存率が違うのか?
群れを離れた雄(♂)は、他の群れの雄雌(♂♀)から、そして、同じ様な一匹狼(♂)と争う事になります。 しかし、群れを離れた雌(♀)は、他の群れの雌(♀)と一匹狼の雌(♀)とだけ争います。 群れの雄(♂)は、追い払うだけで雌(♀)を殺したりしません。
獲物となるシカやカモシカは何処で生活していたのか?
シカやカモシカなどは、「緩衝地域」には狼が来ないのでここで繁殖します。 シカやカモシカと言った動物は、とにかく個体数を増やす事によって種族を繁栄してきました。 「緩衝地域」にいる限り、シカやカモシカは安全なのですが、個体数が増えると食べ物を求め狼のテリトリーへと入り込まなければならなくなります。 こうして、増えたシカやカモシカの個体数を狼たちが獲物とし調整していたのです。
「緩衝地域」の樹木が無くなる?
シカやカモシカが「緩衝地域」の樹木を根こそぎ食べてしまう事にはなりません。 狼たちの群れがより獲物の多い地域へと移動し、また、新たな群れの誕生により「テリトリー」や「緩衝地域」に変化が起きるためです。
狼は人や家畜を襲うのか?
狼たちはテリトリーを持っているので(群れを離れた)一匹狼以外が人里に出没する事もありません。 日本では「肉を食べる」習慣が無かったため、「家畜」を飼育する習慣が余りありません。 (勿論、農耕用の牛や馬、鶏などは飼育していました。) 餌となるシカやカモシカの数が極端に減少しない限り、狼が人間や家畜を襲う事はありません。 狼たちは、森の食物連鎖の頂点であり、天敵はいません。 唯一、狼の天敵と成りうるのは人間だけなのです。 日本における「狼の被害」は、人間の入植や餌となるシカやカモシカの乱獲による「狼の生存の危機」にまで追い込まれた場合に限られます。 アメリカでは、正式な記録として「狼が人間を襲った」事はありません。 アメリカ大陸にいるハイイロオオカミはニホンオオカミよりも大型ですが、入植当時にも人はオオカミに襲われていません。 西部劇の旅の一場面に焚き火をして帽子を顔に掛けて眠るシーンがありますが、それくらい人はオオカミを警戒する必要などなかったのです。 (ピューマやジャガーなど大型のネコ科動物は、人間を襲う場合があります^^)
西洋文化では何故「オオカミは悪者」なのでしょうか?
これは「キリスト教」の布教が原因だと言われています。 宗教の布教には、「不幸」や「恐怖」といったものから「救う」事を謳います。 この時の「不幸や恐怖の代名詞としてオオカミが使われた」事が「人々がオオカミを恐れる原因」になりました。 そして、「赤頭巾ちゃん」「狼と七匹の子山羊」「羊飼いと狼」「三匹の子豚」などの童話でも「オオカミは悪者」として扱われる事になってしまいました。 キリスト教では、魔女狩りの時に「悪魔の使い」として「ネコを迫害」しました。 その風習の名残で西洋の国では、現在でも「黒猫」の数が少なかったりします。 これは、生まれた仔猫の中から「黒猫」だけを殺してしまうからです。
西洋文化に毒されて「狼を絶滅」させた日本の現状は?
森の食物連鎖の頂点であった「狼」を絶滅させてしまった日本では、シカやカモシカによる「森林破壊」が各地で問題となっています。 天敵のいなくなったシカやカモシカは、無制限にその数を増やして、森の木々を根こそぎ食べ、木々を枯らし、森が荒廃しています。 シカやカモシカなどの草食動物は、多くの子供を産みその「数の力で種族を保存」させてきました。 ところが、天敵となる狼がいなくなり、天然動物保護の考え方が発展してきて人間による狩猟にも制限が掛けられる様になり、シカやカモシカの数は爆発的に増加しています。 その為、これまではシカやカモシカが入り込まなかった場所へも入り込み、その食害は広範囲に広がってきています。 高山植物で有名な「尾瀬」には、シカなどの大型草食動物はいませんでしたが、近年シカが入り込み貴重な高山植物を食い荒らす様になってしまいました。
自然界の多様な自己修復機能
自然界は、自浄作用や淘汰による自己修復機能を持っています。 例えば、ある特定の毛虫に卵を産み付ける「天敵となる蜂」が絶滅してしまったとします。 その毛虫は天敵が無くなり生存率が上がります。 しかし、毛虫を餌とする小鳥などの捕食が増えるだけで異常発生するほど自然界のバランスは崩れる事はありません。 しかしながら、その為に大量に異常発生したとしますと、その餌となる特定の木々が被害を受けます。 今度は、被害にあった特定の木々が減少してしまう為にその毛虫は餌が無くなり、自然淘汰されてしまいます。 これは、自然界が多様な自己修復機能を有している為にそのバランスを維持できるのです。 しかし、多様な自己修復機能は、食物連鎖の下位にのみ適用されます。 食物連鎖の頂点に近い所では、自己修復機能に多様性はありません。 日本の森の食物連鎖の頂点である狼の絶滅は、自然界が自己修復できる範囲を超えています。 このまま、シカやカモシカが増え続ければ、森はやがて食べつくされ、木々は枯れ果て、シカやカモシカ自身も餌が無くなり絶滅するしかなくなる。 森の死は、他の多くの動物や昆虫などの絶滅にも直結している。 このままでは、日本の森林は破滅の道を辿るしかない。
シカやカモシカの生存調整
日本では大型草食動物などの狩猟が厳しく制限されている。 特にカモシカにおいては、天然記念物に指定されている事もあり、その数を急激に増やしている。 結局のところ、これらの生存調整を自然界の自己修復機能に期待する事は出来ない為、人間が行わなければならない。 しかし、人間に「種の保存と繁栄」をバランス良く調整できるのだろうか? 何千年何万年と繰り返し、形成されてきた自然界のバランスをたった数百年で壊す事は出来ても、その絶妙なバランスを維持管理し続ける事が可能なのだろうか? 特定地域のシカやカモシカの適した個体数を割り出し、狩猟による間引きを毎年繰り返す事が可能なのか? 近年、ハンターと言われる狩猟者の数は減り、大半が高齢化している現状で広大な森の中から探し出し間引くだけでも大変な事に思える。 更に、その莫大な費用は誰が支払うのか? 大型動物を狩猟する事に対する費用を毎年払い続けるのは「税金」で賄う他は無いだろう。 更に一番難易度の高い問題として、「間引く個体の選定」という重要な課題がある。 出合ったシカやカモシカを手当たり次第、予定数だけ間引けばいいと言うものでもない。 自然界において優先的に間引かれるものから、間引かなければ、種の正しい保存にならない。 狼と言う天敵がいれば、「病気で弱った」「怪我や身体的不具合」など弱体な個体から間引かれる。 そこで生き残った優秀な個体が次の世代に子孫を残す事が優秀な種を繁栄させる事になる。 これらを考慮せずに「数だけ」間引くだけでは、優秀な種の保存が出来なくなる危険がある。 個体数の調整と言っても難しい問題なのだ。
日本の森に狼を復活させる
日本の森に狼を復活させる計画があります。 勿論絶滅してしまったニホンオオカミやエゾオオカミを復活させる事は出来ません。 中国にいるニホンオオカミに似た種を移入しようとする計画です。 森に食物連鎖の頂点を復活させ、自然界の自己修復機能を復活させようとする物です。 この計画自体は、国家が行わなければ実現には程遠い事ですが、日本の森を昔ながらの本来の森に戻す試みには賛成です。 昔の日本と違い、家畜が多く飼育される現代の日本において、狼による被害が発生しないのか? 外国から移入した狼がニホンオオカミが果たしていた役割を正しく果たす事が出来るのか? 検討すべき問題はたくさんあると思うけれど、日本人が壊してしまった森林の修復には必要な事なのではないかと考えます。
エゾオオカミは絶滅していない
エゾオオカミは絶滅していないかもしれない。 正しくは、日本(北海道)のエゾオオカミは絶滅してしまったが、国後(くなしり:現在ロシア領)にはエゾオオカミが存在している可能性がある。 もしも、国後にエゾオオカミが生息しているのならば、是非、北海道でエゾオオカミを復活させて欲しいと思います。
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