111 ペスト(Pest/黒死病) |
- 日時: 2014/06/07 10:46
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- ペスト菌(Yersinia pestis)が体内に入る事によって起きる病気を「ペスト(黒死病)」と呼びます。
■病状 感染の仕方によって「腺ペスト」「ペスト敗血症」「肺ペスト」「皮膚ペスト」に分類されます。 ・「腺ペスト」は、ペスト菌がリンパ腺に感染した場合で、最も多く見られる病状です。 感染した部位のリンパ腺が大きく腫れ、肝臓や膵臓でも菌が繁殖し毒素を出す為に意識が混濁し心臓が弱って死に至ります。 死亡率は、50〜70%で1週間程度で死亡します。 ・「ペスト敗血症」は、ペスト菌が血液により全身に回り敗血症を引き起こします。 皮膚に出血斑ができ、全身が黒い痣だらけになって死亡する事から「黒死病」と呼ばれました。 ・「肺ペスト」は、ペスト菌が肺に感染し、気管支炎や肺炎を起こし血痰を吐いて呼吸困難で死に至ります。 発症例は少ないが、致死率はほぼ100%です。 ・「皮膚ペスト」は、ペスト菌が皮膚で繁殖し、膿疱や潰瘍を作ります。
■歴史 日本では、1899年(明治33年)に国外から侵入しました。(1926年以降日本では発生していません) 西洋では、「東ローマ帝国」時代以降たびたび大流行を繰り返してきました。 東ローマ帝国時代の542年〜543年にかけて「ユスティニアヌス(Justinianus)の斑点」と呼ばれ大流行し、多くの死者を出しました。 14世紀、ヨーロッパ人口の1/3〜2/3、2,000万〜3,000万が死亡したと言われています。 1347年アジア中央からイタリアへ伝わり、1348年には北ヨーロッパへも広まりました。 17〜18世紀にもたびたび流行を繰り返します。 1630年ミラノでは、最盛期には1日3,500人が死亡しました。 1665〜1666年ロンドンでは、最盛期には1日6,000人・計約7万人が死亡しました。 1720年フランスマルセイユで大流行以後、先進諸国での流行は無くなりました。 19世紀には先進諸国の流行はなくなりましたが、発展途上国ではしばしば流行し、1994年インドではパニックが起こりました。
■原因 ペスト菌は、ケオプスネズミノミ(Xenopsylla cheopis ROTHSCHILD)を媒介者として広まります。 げっ歯類(特にクマネズミ)に流行する病気でノミを媒介者として、人間やサル・ウサギ・ネコにも感染します。 (血痰などに含まれる菌からも感染します)
■予防 非常に致死率の高い病気なので、流行させない事が非常に重要です。 人間に流行する前にげっ歯類(特にクマネズミ)に流行する事が多いので、衛生環境を保ちネズミの増殖を防止する事が必要です。
■ペストとネコ 西欧では、1566〜1684年の118年間と言う長い期間「魔女裁判」が行われ、同時に「猫は悪魔の使い」として生きたまま火へ投げ込まれていました。 ペスト流行を機にネズミを駆除し衛生環境を保つ為に「一家に一匹ネコを飼う」事が推奨されるようになり、ネコにとって暗黒の時代に幕が下ろされる結果となりました。
■現代の都市環境 人間が安全で衛生的な暮らしが出来るように都市部では環境改善が行われました。 人が襲われない様に「野良犬を捕獲」した結果、ネコにとって天敵がいない、野良猫が生き易い環境が出来ました。 一方で街はアスファルトに覆われ、猫が排泄物に砂をかける事が容易ではなくなりました。 排泄物にかける砂を求め、民家の庭に入り込み花壇を壊し、時にはプランターをもトイレとする様になりました。 かつての野良犬の様に「野良猫(放し飼いネコ)は害獣」として扱われるようになり、駆除の対象となってしまいました。 更に、都市部では下水道が整備され、都市の地下には「ドブネズミ帝国」の環境が整えられました。 建物は高層化され、年中快適な温度を保つ「クマネズミ帝国」の環境が整えられました。 天敵のネコを人間が捕獲すればする程、以前「野良犬を駆除し野良猫を増やした」時と同様に「ドブネズミ・クマネズミを増やす」結果になっています。 かつて「ゴミを漁るのは野良犬」であったのが「ゴミを漁るのは野良猫」となり、現代の都市部では「ゴミを漁るのはネズミ」に変わってしまいました。 ゴミ集積所に張られた黄色のネットのおかげでカラスも寄らなくなった今、「ネズミの天下」なのです。 増え続けるネズミ社会でペストが流行したら、恐ろしい結果になりそうで心配です。
■個人的希望 ネズミが走り回る街よりもネコがのんびりと昼寝をしている街に私は住みたい。
※現代英語では「Pest」とは、ハエ・ダニやイエネズミなど「人間に害を与える小動物全般」を指す単語として使われています。
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